広報業務は大きく「サービス広報」と「コーポレート広報」の二つに分類できます。今回は、商品やサービスの魅力を世間に発信し、売上に直接貢献する「サービス広報」について説明します。本記事では、「サービス広報」のミッションやメリット、業務における5つのポイントを詳しく解説していきます。
サービス広報とは?
そもそもサービス広報とは何でしょうか。サービス広報の役割と、実際にサービス広報が設置されている企業の例を紹介します。
サービス広報の役割
サービス広報とは、自社の商品・サービスを世間に認知してもらい、最終的には購買に繋げるための広報活動のことです。
潜在顧客に商品・サービスを知ってもらい、購入・導入を促します。具体的には、商品・サービスの特徴をまとめたプレスリリースを出したり、メディア向けの新製品発表会を開催したり、展示会への出展などを行い認知拡大を図ります。
企業を存続させ事業を成長させていくうえで経済活動は必須です。そのために消費者の購買意欲を促進し、購買に繋げるのがサービス広報の役割です。
サービス広報を行う企業例
サービス広報を行う企業例を紹介します。ここで紹介する3社はそれぞれ自社のステークホルダーに合った手法で情報発信をしています。

1社目は、タワーレコード株式会社です。タワーレコード社はTwitterアカウントを積極的に活用した広報活動を行っています。ジャンル毎、レーベル毎、店舗毎などの数十種類のアカウントを運用しており、それぞれのフォロワーに最適な情報をリアルタイムで届けています。SNSアカウント運用によるファン作りは地道なコーポレート広報であると同時に、入荷情報や週間チャートを発表することで顧客の購買行動に繋げる、時代に合ったサービス広報活動と言えるでしょう。
参考:タワーレコードソーシャルメディア一覧
2社目は、サイボウズ株式会社です。サイボウズ社と言えば有名なのがオウンドメディア「サイボウズ式」です。自社の社員の働き方紹介や社長インタビューを公開し、働き方というカテゴリにおいて役立つ情報を発信しています。これはサイボウズ社の社風を分かりやすく伝えるコーポレート広報の役割も果たしていますが、実はきちんとサービス広報にも繋がっているのです。
たとえば『「サイボウズはなぜ在宅勤務用PCまで支給するんですか?」情シスに聞いたら、理念へのこだわりがすごかった』では、社員ひとりひとりに寄り添う姿勢を伝えつつ、自社サービスであるキントーンについても言及しているのです。読んだ人にこのサービスを使ってみようかなと思わせる、上手なサービス広報の例です。
3社目は、Sansan株式会社です。テレビCMでもおなじみの名刺管理サービスのイメージが強いSansan社ですが、名刺管理に留まらないITのソリューションに展開していくために、より大きなスケールでSansanを捉えてほしいという事業目標を立て、PRゴールには「SaaSの代名詞になる」を掲げたそうです。中長期の事業計画を見据えたサービス広報の好例ですね。
SaaSの代名詞になるための戦略として、カスタマーサクセスにおける業界の第一人者のポジションを取ることを目指したPR施策を練り、地道に露出を獲得しています。露出後はカスタマーサポート担当に営業向けの社内勉強会を実施してもらったり、訪問先で「カスタマーサポートについて聞きたいことがあれば、担当の者がお話しに伺いますよ」と言って営業の武器にしたりと、パブリシティを獲得して終わりにせず、他部署と連携して好循環を生み出している例です。
参考:事業に資する「PR」ってどうやるの? SansanのPRマネージャーに聞いてみた(前編)
サービス広報を行う3つのメリット
ここまでサービス広報の役割とサービス広報が設置されている企業例を紹介しました。それでは、企業がサービス広報を行うメリットとは何なのでしょうか。
本項では「事業やサービスを広く知ってもらえる」「営業や広告コストを下げられる」「広報活動の中でもっとも売上に直結しやすい」というサービス広報の3つのメリットについて、詳しく説明します。

1.事業やサービスを広く知ってもらえる
先述の通り、サービス広報の目的は事業やサービスの認知度を高め、消費者の購買活動に繋げることです。プレスリリースを出したり、新製品発表会や展示会をきっかけに取材を受けてメディアに取り上げられたりすることによって、世間に自社の事業やサービスを広く知ってもらうことができます。
2.営業や広告コストを下げられる
サービス広報を進めていくことにより、営業や広告コストを下げることができます。
たとえば、すでに世間に認知されている商品を売るのと、まだ誰にも知られておらず実績もあまりない商品を売るのは、どちらの営業活動が大変でしょうか。答えは明らかです。サービス広報の活動を通して商品・サービスを広く知ってもらうことは、営業活動の助けになるのです。
商品・サービスを知ってもらう方法としてテレビCMや交通広告などの広告出稿を検討する企業も多いでしょう。しかし広告を出すためには多額の費用が発生します。良い商品・サービスを持っていても資金が潤沢ではない中小企業やベンチャー企業は、広告宣伝費に予算を割くことが難しいかもしれません。この場合にも、サービス広報が役立ちます。広報担当者の人件費は発生するものの、広報活動を通したメディア掲載やSNSなどへの情報発信に費用は発生しません。発表したプレスリリースをきっかけにテレビに商品やサービスが取り上げられれば、広告費をかけることなく広く世間に自社を知ってもらうことができるため、結果的に広告コストを下げることができるのです。
3.広報活動の中でもっとも売り上げに直結しやすい
サービス広報は、広報活動の中でもっとも売り上げに直結しやすい業務です。先述のように商品・サービスを世間に認知させる活動を行うため、情報発信やメディア露出の結果が消費者の購買活動に繋がりやすいのです。
「コーポレート広報」や、「採用広報」「技術広報」など他の広報業務は、長期的視点で企業ブランドを確立し企業価値を高めていく活動であり、それと比較するとサービス広報はもっとも売り上げに直結しやすい広報活動だと言えるでしょう。
サービス広報はどんな仕事をするの?サービス広報の業務内容
自社の商品・サービスを世間に認知してもらい、最終的には購買に繋げるのを目的とするサービス広報ですが、具体的にはどんな仕事をするのでしょうか。以下は一例です。
- 製品・サービスに関するプレスリリースを発表する
- 製品発表会や記者クラブでのレクを行う
- 展示会に出展する
- SNSやYouTube、自社のホームページなどで情報を発信する
- パブリシティを営業活動に活用できるようにする(媒体への二次利用申請、チラシやパンフレットなどの作成)
上記の活動により、多くの人に自社と商品・サービスを知ってもらうことができます。
サービス広報の業務をするときの5つのポイント
1.導入事例を活用する
自社サービスの導入事例を活用しましょう。サービス導入を検討する際に、パンフレットやホームページに実際にそのサービスを使用している人の肯定的な感想が紹介されていると説得力が増します。
自社サービスの導入先に取材を申し込み、インタビューさせてもらいましょう。担当者の声と、サービス導入前後の具体的な変化をまとめ、ホームページやパンフレットに掲載します。営業活動にも大きく寄与できるはずです。
また、インタビュー内容は貴重なユーザーの意見です。商品開発部やマーケティング部にも共有し、広報担当者が率先して情報の好循環を作りましょう。
2.データを活用して客観的なインパクトを伝える
データを活用することで客観的なインパクトを与えることができます。

具体的な数字を示せるという点で、調査リリースを発表するのは有効な広報活動です。アンケートを実施し、その結果を調査リリースとしてまとめて発表します。このとき、自社の商品・サービスの必要性が訴求できる結果となるよう、多くの回答パターンを想定し、仮の見出しを数種類用意しておきましょう。
一方で、自社に都合の良い結果を出すために誘導尋問していると感じさせるような調査リリースは、見た人をしらけさせてしまいます。あくまで客観的なデータになるようその塩梅も考慮しつつ戦略的に質問項目を設定しましょう。
また、データを活用して客観的なインパクトを伝えた好例としてJINS PCの広報戦略があります。JINS PCのマーケティング担当者は、まずは一日中パソコンに向かい目が疲労しているであろう「ITコア」のユーザーを想定し、ブルーライトという言葉を浸透させることから始めたそうです。ブルーライトの危険性を啓蒙する専門的な情報も提供し、最終的には日常的にパソコンを使う「ITマス」向けに、誰にでも分かりやすい説明を重視する広報活動を展開します。結果としてJINS PCは大ヒットしました。ブルーライトの存在とその危険性をアカデミックに解説することで説得力を持たせた好例と言えるでしょう。
参照:マイナビ転職『「JINS PC(R)」の売り上げ好調が続く理由。チームリーダーは何を心掛けるのか。』
3.他部署と連携する
自社の商品・サービスに関わるすべての人が対象となるサービス広報において、他部署と連携して情報収集することは必須です。
営業担当からはお客様の声を、店舗担当やカスタマーサポートからはエンドユーザーの声を拾ってもらいましょう。情報のハブである広報担当者はそれらを有益な情報として活用します。「お客様の声」という形でまとめてホームページやパンフレットに掲載し、営業活動に役立ててもらいましょう。
メディアからの取材でユーザーの利用シーンを撮りたいという場合にも、先述の「1.導入事例を活用する」の項目を実践するためにも、お客様とつないでくれる社内の担当者との連携は不可欠です。
4.社会の動きと紐づける
人々の暮らしをよりよくする商品・サービスであるという軸を持って情報発信しましょう。
社会の動きと紐づけるということは、顕在化しているニーズに応えていたり、潜在化している問題を解決する商品・サービスであるということを知ってもらうための広報活動を行うことです。独りよがりの情報発信にならないようにしましょう。
5.宣伝にならないよう注意する
「広報」と「宣伝」は異なります。商品・サービスの優れた点を説明するだけでは「宣伝」になってしまいかねません。先述の「4.社会の動きと紐づける」ことを意識しながらプレスリリースを書きましょう。
また商品開発は必ずしも社会性を意識しておこなわれるとは限らないので、その場合は先述の「2.データを活用して客観的なインパクトを伝える」で説明した通り、データを用いてロジカルに商品・サービスの必要性を示しましょう。
参照:『サービス広報に役立つリサーチの鉄則』
サービス広報は視野を広く持って
広報担当者は自社と社会を繋ぐ存在です。サービス広報は商品・サービスの認知を拡大するという業務なので、意図せず宣伝っぽい情報発信になってしまいがちですが、「なぜこの商品を開発したのか」「このサービスはどんな困りごとを解決するのか」といった、世の中のニーズと絡めて広報活動するように意識しましょう。目の前の売上貢献だけでなく、あくまで自社と社会を繋ぐための広報活動だという広い視野を持つことが大切です。
サービス広報に関するQ&A
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