企業活動において、広報PR担当者の役割とは何なのでしょうか。本記事では、広報PRの5つの役割と、企業・団体に広報PR担当者が必要な3つの理由を説明します。
また、一般的な企業で広報PR業務がどのように分担されているかについてもご紹介。新たに広報PR部門を新設する場合や、既存の広報PR部門に新メンバーを迎える場合などに、参考にしてみてください。
企業にとっての広報の5つの役割
広報PRの基本的な目的は「自社と社会との間で信頼関係を構築し、維持すること」。
さらに細分化すると、およそ5つの役割が挙げられます。
この記事では、『2021年度版 広報・PR概説』(公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会編)を参考に、それぞれの役割について補足をしながら説明していきます。
1.伝える役割
広報PRの役割の中でもっとも基本的なものは、企業の存在意義や経営理念をステークホルダーに正確かつ効果的に伝えることです。企業の価値観やビジョンを理解してもらうことは、ビジネスの継続と長期的な成功のために欠かせません。
伝える方法は言葉だけではありません。広報PR担当者の態度や振る舞い、姿勢などからも企業の価値観やビジョンが伝わることを理解しておく必要があります。このような非言語的な要素は意図しない形で受け止められることも多いため、経験を積み適切なスキルや知識を持って対応することが大切です。
2.対話する役割
伝えるだけで完結させず、ステークホルダーと双方向のコミュニケーションを行うことも広報PRの重要な役割です。広報PR活動のひとつでもある「広聴」を通じてステークホルダーの理解に努め、社会のトレンドを把握し、自分の発信した情報が相手にどのように受け取られたのかを確認します。
その際ステークホルダーの要求や批判にもしっかりと耳を傾け、相互の理解を深めることは、信頼関係の構築に不可欠なプロセスです。
「広聴」については以下の記事で解説しています。
3.フィードバックの役割
広報PRには、社会からの期待や評価・批判を受け止め、社内の仕組みや体制に反映させる役割があります。外部からの意見をただ聞くだけでなく、フィードバックを全社に届けるシステムを整えて、ステークホルダーの声に迅速に対応することが大切です。
このようなフィードバックの仕組みができていれば、ステークホルダーとの信頼関係の構築だけでなく、改善を重ねる中で業績の向上や企業の成長にもつながります。
4.自己変革の役割
ステークホルダーからのフィードバックに対応するうえで、製品やサービスだけではなく、組織文化など企業そのものを変革しなければならないこともあります。そんなとき広報PR担当者は、指摘された改善点や批判を経営陣に共有し、経営課題として経営戦略に落とし込んでもらえるよう働きかけなければなりません。
ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを通じて経営をサポートする立場である広報PR部門は、企業にとって耳に痛い話も進んで受け入れ、企業の改革を促す役割を担っています。
5.信頼関係をつくる役割
もっとも重要なのは、1〜4の役割を十分に果たした結果として、企業と社会・ステークホルダーとの信頼関係を構築することです。広報PR活動を重ねる中で、企業と社会の「コミュニケーションのインフラ」が形成されていきます。コミュニケーションのインフラがしっかりとしていれば、企業としてうまくいかない時期があっても、ステークホルダーからの信頼をもとに難局を切り抜けることができるでしょう。
企業にとって、ステークホルダーとの信頼関係は重要な資産なのです。その資産を維持・拡充するという重大な役割を担うのが広報PRです。

企業にとって広報担当者が必要な3つの理由
広報PRの5つの役割を説明しましたが、そもそも企業・団体にとって広報PR担当者はなぜ必要なのでしょうか。
「自社と社会との間で信頼関係を構築し、維持する」という広報PRの目的に基づいた広報PR担当者の究極のミッションは、「企業・団体の存在意義を周知し、経営を持続させ、企業価値を高めていくこと」です。そのためには、「自社に対する正しい認識を促す」「企業を取り巻く環境の変化にいち早く適応する」「企業文化・企業イメージを醸成する」といったことが求められます。それぞれについて詳しく説明します。
1.自社に対する正しい認識を促す
自社は社会の中でどのような役割を果たしているのか、業界内だけでなく社会の一員として考えたにときどのような立ち位置なのか、といった自社への客観的な理解を深めることは、適切な経営戦略を立てたり商品開発を行ったりするうえで非常に重要です。
前述のように、広報PR担当者には社会からの声に耳を傾け企業活動に反映させる「フィードバックの役割」があります。広報PR担当者は一歩引いたところから社会と自社を見つめ、気づきを積極的に経営陣や社員にフィードバックすることができる存在なのです。
2.企業を取り巻く環境の変化にいち早く適応する
広報PR担当者は常にさまざまなニュースやトレンドを収集し、企業とステークホルダーの信頼関係を築くために活用します。
経営陣や従業員は自社の事業や業界の動向のみに集中しやすいため、世の中の流れから取り残されてしまうこともままあります。そこで広報PR担当者が自社を取り巻く環境の変化を察知し、経営陣や従業員に共有するのです。
例えば、事業に関連する法案が可決に向かっているという状況をいち早くキャッチし、商品・サービスの担当者と対応策を練るといったケースが考えられます。
このように、経営陣や従業員が自らの業務に集中しているときでも、広報PR担当者は冷静に広い視野を持ち続け、社会の一員として自社が果たすべき役割を考えて行動します。
3.企業文化・企業イメージを醸成する
企業イメージと企業文化は、企業のブランド価値、従業員のモチベーション、顧客の信頼などに大きな影響を与えます。
広報PR担当者が常に誠実な姿勢でステークホルダーと向き合い、対話とそれに伴う企業の変革を繰り返していくことで、社外にはステークホルダーの声に応えてくれるという信頼に基づいた企業イメージが、社内には改革をよしとする企業文化が醸成されていきます。
「〇〇社は遊び心のあるコミュニケーションを大事にしている」「〇〇社は実直な商品開発を行っている」といった企業イメージが形成されれば、企業のブランド価値が高まる効果が期待できます。
また、企業文化を醸成することで、従業員が企業の価値観や方針に共感できるようになり、モチベーションが向上します。顧客にとっても企業への共感は購入や支援の大きな理由となるでしょう。
このように好ましい企業イメージと企業文化が醸成されるよう広報PR担当者が働きかけることは、企業の価値や業績に大きな影響を与えます。

企業では広報の仕事はどのように役割分担されるのか?
広報PR担当者はステークホルダーとの信頼関係を築き、信頼関係に基づいて企業価値を高め自社に貢献する存在です。その仕事内容は、働きかけるステークホルダー別に「社内広報」「社外広報」に分けられます。
「社内広報」は社内の人々へのコミュニケーションを、「社外広報」は社外の人々へのコミュニケーションを担います。
それぞれの役割や、具体的な仕事内容について見ていきましょう。
社内広報の役割
社内広報の役割は、社内外の情報を経営陣や社員に伝達し、社内コミュニケーションの促進を図ることです。
「いま企業には何が起きているか」「なぜ企業はそういう行動をするか」「それに対し社員はどう行動することが期待されているか」を全社員に伝えて理解を促します。
具体的には、社内報の作成、社内イベントの企画運営、会社案内・パンフレット・プレゼン資料など制作物のチェックなどが社内広報の業務です。ほかにも、経営理念やビジョンを浸透させたり、社会で起こっていることを共有したり、自社のメディア掲載内容を報告したりすることで、情報のハブとしての役割を果たします。
詳細はこちらの記事で解説しています。
社外広報の役割
社外広報の役割は、企業・商品・サービスの認知度を高め、売上拡大に貢献することです。
社外広報は、広報PR活動を行う対象に応じてさらに「コーポレート広報」と「サービス広報」に分けることができます。
「コーポレート広報」は企業のイメージ向上や企業文化の醸成を担う業務です。望ましい企業イメージを築き、より強固なものにしていくことを目指し、長期的なスパンで株主・投資家、取引先、生活者、国際市場、政府、国際機関など、幅広いステークホルダーとコミュニケーションを取ります。
「サービス広報」は自社の商品・サービスへの認知や信頼を高め、最終的には売上に貢献することを目指します。商品・サービスに関する情報を発信し、興味喚起やイメージ形成を行うことで購入や導入を促します。企業によってはマーケティング担当者がサービス広報の仕事を兼任していることもあります。
コーポレート広報、サービス広報については、以下の記事でも解説しています。
広報担当者の役割は、企業と社会を信頼関係でつなぐこと
企業活動において、広報PR担当者はパブリック(=社会)との間に信頼関係性を構築・維持する役割を担っています。
より具体的には、広報PR担当者には「伝える」「対話する」「フィードバックする」「自己変革する」「信頼関係をつくる」という5つの役割が求められているのです。
企業と社会の「コミュニケーションのインフラ」となる信頼関係を構築する広報PR活動は、企業が存続していくために不可欠なもの。
広報PRの役割や仕事内容について、あらためてしっかりと理解し、自社がよりよい企業活動を行えるように導いていきましょう。
<編集:PR TIMES MAGAZINE編集部>
広報の役割に関するQ&A
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